私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

永井荷風

 独居生活を送っていた永井荷風は、面倒な洗濯をせずに着古した衣類をトイレに捨てていたそうだ。電気洗濯機はまだ普及していない。それを雑誌(『文藝春秋』か『週刊朝日』)で読んだ父は、合理的だと感心していた。トイレに何を捨ててもよかったらしい。
 若い人達は、昔の日本家屋のトイレが2部屋だったことを知らないかもしれない。和式トイレでは男性が小用を足すことができないので、男性用小便器(アサガオ)の部屋が別に必要だった。女の私から見れば、スペースの無駄で、掃除もその分たいへんだし、洋式トイレに替わったのは喜ばしい限りである。
 トイレは家の隅にあり、水道管から遠く離れている。トイレと台所や洗面所が近いと不衛生だったのだろうか? 水道の蛇口がトイレにないから、用を足した後の手洗いには、縁側に吊るしたアルミ製の手水器の水を使う。手水器の底にある出っ張りを押し上げると、シャワーのような水が一定時間出てくる。京都の祖母父の家には、石製の立派な手水鉢があり、ひしゃくで水を汲んで手に掛ける。
 トイレの屋根に換気用の小さな煙突がある。我が家の煙突は、上に円錐形の赤い傘が付いていて、風でくるくる回ってかわいい。当時普及していた家電は電灯、ラジオ、アイロン、扇風機くらいで、換気扇など台所にもなかった。

左 手水器:NHK回想法ライブラリーより
右 手水鉢:Wikipediaより

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