私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

女は三界に家なし

 私が生まれる直前に曽祖母が死去すると、いち子が実家の主導権を握り、祖母はいち子の顔色を見ながら暮らすようになった。母は、「お母さん(私の祖母)は、『三界に家なし』そのままの人生で、ほんまにかわいそや」と同情する。実家の近所には、息男一家と同居しているもっと気の毒な女性がいた。母が私の息男を抱いて表に出ると、「うちにも抱かせて。おおきに。かわいいなあ。うちの孫はお嫁さんが抱かせてくれへんねん。あんたが羨ましいわ」と言われたそう。
 祖母は70代になった祖父が脳卒中で倒れてからは、その介護もたいへんだった。おむつを嫌がって取ってしまい、大小便を部屋にばらまく。当時まだ紙おむつはなかったので、布おむつの洗濯だけでも苦労だ。畳に布団を敷いて寝ていた祖母父に、いち子がベッドをプレゼントした。祖母はベッドを汚したくないと言って、祖父の最期まで2台のベッドのビニールカバーを外さなかった。寝心地が悪いだろうに。
 祖父は自宅で死を迎えた。臨終の日、祖母はおいおいと声を上げて泣いた。祖母のこんな泣き方を見たのはこのとき一度だけである。長い介護から解放されて、祖母はほっとしたのかと思いきや、やはり長年連れ添った祖父を愛していたのだ。祖父が元気な頃から不機嫌な顔で文句ばかり言って、仲が悪そうだったけど。4人の子供達は誰も涙を見せなかった。祖母は、舅・姑・夫の3人の最期を見取った。祖母も在宅死だが、いち子に迷惑をかけまいと頑張り、いち子はほとんど下の世話をせずにすんだと言う。

イラストエイトより

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