私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

不眠症

 父の不眠症は厄介だった。常に睡眠不足に悩まされている本人はもちろんつらいだろうが、家族も気を遣わねばならない。父が隣室で寝ているときは、抜き足差し足で歩き、ひそひそ声で会話する。乳幼児期の私は夜中によく泣いたので、母はそのたびおぶって京都の街を歩き回らねばならなかったと言う。私の夫は父と正反対で、すこぶる寝付きがよく、滅多なことでは目を覚まさないから、子供達がいくら大騒ぎしても大丈夫。夜中に大泣きしたときはいつも私があやさねばならないと父にぼやくと、「起きんと熟睡してくれはったらありがたいやんか。」 育児は母親の仕事と考える父は、全く同情してくれない。
 T市時代の我が家の就寝時刻は午後8時台だった。子供に合わせているのではなく、不眠症の父が少しでも長く睡眠時間を確保しようと思って早寝なのだ。父と私が奥の部屋で、母とマイコが台所に近い部屋で寝た。ほかに掘りごたつの部屋と狭い台所がある3Kの家である。よその家庭は妻夫と子供に分かれて寝ていたのだろうか? 日曜日の朝に私が目覚めると、母が父の布団の中にいることがときどきあった。まだ意識がはっきりしない私を、両親が笑って見ている。そこへマイコが不服そうな声を出しながら部屋に入ってくる日もある。自分を独り残して、3人が集っているので怒っている。そんなときはすぐに母が起き上がって、マイコと一緒に自分達の寝室に戻る。《わたしは結婚したかて、夫の寝床に潜り込むような慎みのないことは絶対しいひん》と、『結婚』が理解できていない当時の私は母のはしたない行為を軽蔑していた。日曜日の朝は父が昼近くまで寝ていることもあり、それに付き合うと寝過ぎで一日中体がだるい。

PIXTAより

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