私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

みおつくしの鐘

 父が寝床で新聞や雑誌を読むときは、電気スタンドがまぶしくないように、私の顔に新聞紙を1枚かけてくれる。父は私とマイコには姿勢正しく読書することを強要しながら、自分は寝転んで読む。私達の視力の低下を避けたく、父自身は読書に睡眠薬の役割を期待しているからだ。
 ラジオもスタンドもつけないで、暗闇の中で種々雑多の知識を教えてくれる夜もある。例えば、30日以下の短い月は『西向く侍』と覚えるとか。『十一』は縦に書くと『士』になるからと説明してくれたが、まだ学校で『士』の漢字を習っていなかったので、『土』の方が分かりやすいのにと思った。《けど、土が西を向くというのもおかしいな。》 日本の時刻の基準地は明石で、少し東に位置するここでは正午の太陽が天頂より2分西にずれているというのも興味深かった。父は法学部を出たにもかかわらず、法学関係の話はせず、数学っぽい内容が多かった。数学的なことを考えるのは私も好きだったけれど、寝付きのよい私は話の途中で眠ってしまうことが多くて、残念ながら教えてくれた内容をほとんど覚えていない。
 大阪市に設置されている「みおつくしの鐘」が午後10時に鳴るのをラジオで毎日流していたが、その時刻の私は夢の中。東京へ転居する10歳半までに数回しか耳にしたことがない。2歳下のマイコの方が私より先に放送を聞いた。彼女は父の血を引いて成人後不眠症に悩んでいる。鐘のメロディは、イギリスのビッグベンと同じ『ウェストミンスターの鐘』である。その後学校のチャイムにも使われるようになって、関西人だけでなく、全国民になじみ深い曲になった。

みおつくしの鐘:大阪市のHPより

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