私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

8ミリ映写機

 父が母に、「洗濯機かオルガンか、どっちがええ?」と尋ねたそうだ。母は電気洗濯機を見たことがなかったので、その威力が理解できていなかった。姉のいち子伯母に感化されて教育ママになりたい母は、気持ちがオルガンの方に傾き、芦屋の高級住宅地に住む叔母(私の大叔母)に相談した。
 『芦屋の叔母ちゃん』は私の祖父の末妹である。資産家に嫁いだので、井村家の親戚随一の金持ちだ。私は彼女の家でミキサーを初めて見た。バナナジュースを作ってもらい、こんなにおいしいジュースを飲むのは生まれて初めてだと思った。次にミキサーを見るのはその数年後で、近所の森田さんが、「ミキサーを買うたさかい、ニンジンジュースを作ったげるね。」 かつてのバナナジュースを思い出し、喜んで飲んでみたらまずくて飲み干すのがたいへんだった。子供の頃の私はニンジンが嫌いだったから。森田さん宅は我が家と同じレベルのサラリーマン家庭だが、新し物好きのようで、8ミリ映写機も持っており、家族を写した動画を見せてくれたこともある。
 芦屋の叔母ちゃんの豪邸にはミキサーやピアノなどいろいろあるが、電気洗濯機はなかった。お手伝いさんがいるから不要なのかも。「オルガンとピアノは弾き方が全然違うねん。ピアノを習[なろ]ても、家でオルガンで練習してたら上達せえへんえ」と叔母ちゃんに言われて、母は洗濯機を選ぶことにした。オルガンを買っていれば、私の音痴がかなり矯正されたのではと思うと非常に残念だが、電気洗濯機の購入に因って母は大幅に家事労働を軽減できた。

8ミリ映写機:大人の科学のHPより

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