私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

園長先生

 悪いことも良いこともせず、目立たない私は、担任の視野の外にいたような気がする。私の方も彼女の印象が薄くて、高校までの担任で唯一名前を覚えていない先生だ。半年ほどの短い期間だったせいもあるかも。大阪の大宝幼稚園の中西先生は母と仲がよかったこともあって、発達の遅れている私に気配りしてくれたように思う。誰とでもすぐに懇意になる母なのに、なぜかK幼稚園の先生達とは親しくならなかった。1年半以上続くほかの教え子達ほど新入りの私をかわいく思えないだろう先生達に、母も素っ気なさを感じたのかもしれない。
 私はクラスの皆についていこうと必死で頑張った。例えば、遊戯室で園長先生が気を付けの姿勢をしてみせて、「これはええ姿勢ですか?」と問うと、「あかん!」と園児達が一斉に叫ぶ。「そやねえ。これはどうですか?」「ええ!」 私には2つの姿勢の違いが分からなくて焦った。皆簡単そうに答えているのに。私が違いを理解できたのは小学生になってからである。胸を張った正しい姿勢と、腹を前に突き出した反り腰の悪い姿勢を、園長はやってみせていたのだが、太っていてどちらの姿勢でも腹が前に出ているので、私には同じように見えたのだ。また、「こんなことをしたら、ほかの人に迷惑でしょう」とか、「人に迷惑をかけたらあきません」と先生達がよく言う『迷惑』という言葉は、K幼稚園に入って初めて耳にしたので、最初の頃は意味が分からず、どうしようと思った。私の両親は、「こんなことをしたら、こうなって困る人がいるやろ」と具体的に説明し、抽象名詞の『迷惑』を使わない。ほかにも知らない言葉が使われるたび、内容を理解しようと私は懸命に努力した。

イラストACより

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