私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

キセル

 祖母はタバコを吸う。長いキセルの先に刻みタバコを詰める。父もたまに吸うが、紙巻きタバコの『ピース』である。私の知る親族で刻みタバコの愛用者は祖母だけだ。茶の間にあるタバコ専用の机の前に座って一服する。タバコの燃え殻を机に備え付けの灰皿に落とすために、キセルを灰皿にコンコンと打ち付けるしぐさが私には印象深かった。祖父がタバコを吸わないのに、祖母は曾祖母父の存命中からこの机で喫煙していたのだろうか? 曾祖母(祖父の母)は厳しい人で、祖母はこき使われていたと母から聞いているのだが。
 祖母は私が中学生のときに禁煙宣言をした。タバコの害が問題視される前で、映画やテレビのドラマでも俳優が盛んにタバコを吸っていた時代に突然禁煙を決意したのは、禁煙すると太れると聞いたからだそうだ。小太りの私は祖母のほっそりが羨ましかったけど。禁煙後しばらくは、口がさみしいと言ってよく飴玉をしゃぶっていた。努力空しく、結局祖母は84歳で亡くなるまでか細いままだった。
 祖父はタバコなんかより甘味を好み、『男子厨房に入らず』の世代なのに、自分で白玉団子を作ったりして、私にも食べさせてくれた。そんな面倒な物を祖父に作ってあげる気持ちなど、祖母には更々ない。ようやく私の誕生頃に義母父が亡くなって、清々しているところなのだから。私の一家が大阪から兵庫県に転居した後も、祖父は必ず阪急の十三駅で酒まんじゅうを買ってきてくれた。
 母の姉妹では、三女の幸子叔母だけがタバコを吸う。もちろん紙巻きタバコ。吐いた煙で輪を作り、次の煙を輪の中に通す芸当ができる。喫煙中の彼女を見つけるたびに、私とマイコは「やって、やって」と煙の芸当を要求した。

キセル:ひろしまWEB博物館のサイトより

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