セルロイド
入学間近に勉強机を買ってもらった。自分専用の引き出しが沢山できてうれしい。勉強や読書は相変わらず茶の間の掘りごたつでするが。母の末妹の洋子叔母が、セルロイド製の筆箱を入学祝いにくれた。蓋に描かれた着物姿の若い女性の絵を、母が竹久夢二風だと評する。目尻の下がった大きな目が左右に離れていて、病身に見えるところが、竹久夢二の絵の特徴なのだそうだ。母の少女時代、彼男の絵がはやったと言う。
下敷きもセルロイド製だ。セルロイドは19世紀に発明された最初のプラスチックである。燃えやすいし、自然発火もするので、今は製造されていない。母が買ってくれた赤い下敷きには、片隅に浮き彫りのバンビの絵があった。授業に退屈するとノートの紙の上から鉛筆でこすって、バンビを写し取って遊んだ。ノートの端に絵を描いてパラパラ漫画を作る級友もいた。
竹久夢二:Wikipediaより