私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

練り歯磨き

 京都の町家では、茶の間(居間)を『台所[だいどこ]』と呼び、台所は『走り』という。『走り』は、玄関から奥の庭まで続く『通り庭』の一部で、土間だから下駄を履いて調理する。うっかり食べ物を落とそうものなら、土にまみれて食べられなくなってしまう。『走り』の上は吹き抜けになっている。『おくどさん』と呼ぶかまどにまきをくべて、つばの付いた大きな羽釜で御飯を炊く。羽釜には水量の目盛りが書かれていないから、祖母は米の上に中指を立てて水深を測る。母も電気炊飯器を買うまでは羽釜を使っていた。
 流し台は洗面台を兼ねていて、毎朝そこで歯を磨く。大阪の我が家では『練り歯磨き』を使っているが、祖母父の家は文字通りの『歯磨き粉』である。ベビーパウダーの容器のような平たい円柱の缶に入った青白い粉末に、水でぬらした歯ブラシを押しつけると、歯ブラシに粉が付く。いち子伯母一家は我が家と同じチューブ入りの練り歯磨きだ。いち子の夫が私に、「『サン』は太陽やから日の出の朝、『スター』は星やから夜、朝と夜に歯磨きするとゆう意味や」と、『サンスター』の名前の由来について教えてくれた。我が家は一日1回朝だけ磨く習慣なので、私は祖母父の家でも朝しか磨かない。ちなみに我が家の練り歯磨きは『ライオン』だった。当時はライオンとサンスターの2企業が練り歯磨きの市場を席巻していた。祖母父が使っていた粉末の歯磨き粉は練り歯磨きの勢いに押されて、いつのまにか店頭から消えてしまった。しかし名前は、『歯磨き粉』の方が残って、『練り歯磨き』という言葉は使われなくなった。『練り歯磨き』の方が正確な表現だと思うのに、なぜだろうか?

通り庭:湧口善之さんのサイトより


羽釜:千葉県立中央博物館のサイトより


歯磨き粉:SUNAO製薬のサイトより

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