私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

スケーター

 数軒先に住んでいるたか子ちゃんともよく遊んだ。たか子ちゃんは私より何カ月か下で、私とマイコの間の学年になる。おとなしい彼女は、いつも私の要求に従順なので、私の思い通りに遊べて楽しい。マイコは小さ過ぎて私の意図を理解できないことが多いし、すぐに気が変わって遊びが長続きしないが、たか子ちゃんは根気よく私の言うなりになってくれる。ある日彼女が帰るとき、「またあった」と私が言うと、彼女は「またあした」と返した。「『またあった』て言い。言わんといんだら(帰ったら)あかん。」 勝手なことを命じて彼女を困らせていると、横から母が、「『あした』が正しいえ。たか子ちゃんの言わはる方が合うてるえ」と、私をたしなめた。ほかの人にはまともに口も利けないくせに、彼女には言いたい放題だったようだ。この会話だけが私の記憶に鮮明なのは、あまりにも理不尽な自分の言い種に、やましい気持ちが長く後を引いたからかも。
 あれから70余年たって、たか子ちゃんがすっかり忘れてくれているとうれしいのだけど。母はたか子ちゃんの存在すら覚えていない。たか子ちゃんも私についての記憶自体をなくしているかも。それはちょっと寂しい気がする。
 彼女の家に室内滑り台があって、それに乗りたくて時々遊びに行くが、内弁慶の私はたちまち借りてきた猫に変身する。たか子ちゃんの家の人に何を聞かれてもうなずくのが精一杯で、私の母ときちんと話せるたか子ちゃんの方がはるかにしっかりしていた。
 かっちゃん姉弟とたか子ちゃんのほかに近所で覚えている子は、『お醤油屋さんのお姉ちゃん』である。かっちゃんの姉の征子ちゃんと同い年なのか、2人は仲が良さそうに見えた。父の話では私とマイコの面倒をよく見て遊んでくれたそうだが、かっちゃん姉弟やたか子ちゃんほど、私にとって印象が強くない。彼女と一緒に撮った写真がアルバムにある。私が三輪車にまたがり、マイコがスケーター(キックスケーター)に乗っている横で、彼女がほほえんでいる。

『お醤油屋さんのお姉ちゃん』をカットした写真

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