私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

友禅流し

 四郎の家の近所に白川が流れている。川のほとりにしだれ柳が植わっていて、私はそれを見るたび、小野道風の逸話が頭に浮かぶ。川の中に入って遊んだ。ふくらはぎまでしか漬からない浅さだが、無色透明のきれいな水だ。夏なので脚を水に漬けると気持ちがよい。
 水の色が鮮やかな赤や青になる日は入れない。友禅流しをしているのだろうか? そういえば、春江の母は西陣織を織る技術を持っており、金持ちの春江に頼らず、晩年まで働いて自活していた。毎日のように春江の家に来て孫の世話や家事を手伝い、私とマイコにも親切だった。春江は母を恨んでいて、つっけんどんな態度で接する。祖母が大好きな私の母と大違い。上級の学校に進学させてもらえず、一郎伯父宅に女中奉公に出されたとのこと。そこで四郎と知り合い、結婚した。
 春江は塗り絵が好きで、塗り絵と色鉛筆を買っては、3人で塗って遊んだ。私はクレパスで絵を自由に描くのは好きだが、線画に色を塗るのは楽しくなかった。私の絵は線の枠内を一色で塗り潰すだけで、創造性のかけらもない。春江は洋服にカラフルな模様をつけたり、頭にリボンを乗せたりして、ユニークな作品に仕上げる。彼女は子供が手を離れた20年後に油絵を習い始め、絵の才能を花開かせた。もっと早くに目覚めていたら売れる絵が描けたかもしれない。

西陣織:Wikipediaより

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