私は団塊の世代

団塊の世代の私が生きてきた時代を振り返ってみようと思います。私の記憶の間違いをご指摘くださるとうれしいです。

初恋

 私の初恋は小学1年生のときだ。同級生のAちゃんを好きになった。Aちゃんと話すときはいつもわくわくする。「歯磨き粉は辛いから嫌い」と私が言うと、自分はバナナやイチゴの味の歯磨き粉を使っているので、今日はどの歯磨き粉にしようかと楽しみだとか、前日に見た楽しい夢の話をしてくれた後、「今日は昨日の夢の続きを見るねん」とか、どこまで真意なのか分からなかった会話を今も懐かしく思い出す。当時から果物の味がする歯磨き粉があったのだろうか? Aちゃんの膝にイボがあるのを見つけた私は、自分の膝にもイボがあるといいなと思っていたら、願い通りイボができた。うれしくてイボをいとおしんでいたが、3年になってAちゃんと別のクラスになると、いつのまにかイボはなくなった。
 当時『婚約』という言葉がはやっていた。私達はまだ子供だから結婚はできないけれど、大人になったら結婚するという約束は今できる。普段から仲良くしているBちゃんに、「キリコちゃん、僕と婚約しよ」と言われて、Aちゃんと結婚したい私は返事に窮した。「あかんねん」「できひんねん」といくら言っても、「なんでや?」としつこい。《Bちゃんの気持ちを傷つけんように断るにはどうしたらええやろ》と思案して、「もうほかの人と婚約してるさかい」とつい言ってしまった。すると今度は「誰と?」とまたしつこく聞かれて、とうとうAちゃんの名前を出してしまった。その翌日だったかに、Aちゃん・Bちゃんと私が学校の外で一緒になったとき、BちゃんがAちゃんに問いただした。Aちゃんは婚約などしていないと即答して、私はもう恥ずかしくて顔が真っ赤になった。その後どんな行動をとったのか記憶にない。幸い2人とも婚約について以後言及せず、2人とも今まで通り仲の良い友達でいてくれた。
 2年の終わりにクラスのお別れ会が開かれることになって、私はお別れ会の出し物にイソップの『金のおの』の劇を思い付き、2人を誘った。私が書いた脚本を見せると、2人とも参加を快諾してくれたので、早速練習のために私の家に集まった。Aちゃんが正直なきこり、Bちゃんがうそつきのきこり、私が女神という配役で練習を始めたら、突然Bちゃんが泣き出して帰ってしまった。Bちゃんに意地悪した覚えはないし、なぜ泣いて帰ったのか今も分からない。私がAちゃんに自分よりいい役を与えたことが分かったから? 私がAちゃんに夢中で自分がないがしろにされたと感じたから? 結局私の脚本は日の目を見ずに終わった。
 3年はAちゃんともBちゃんとも別のクラスになって、顔を合わせることがなくなり、私は新しいクラスに好きな男子を見つけて、初恋はあっさり終わった。3・4年に好きになった子は、1・2年も同じクラスだったのだが、1・2年時は眼中になかった。

金のおの:イラストACより

×

非ログインユーザーとして返信する