路傍の石
『路傍の石』の作者、山本有三はS小学校で使っている国語の教科書の編集者だ。貧困のために中学に進学できず、苦労しながら成長する少男吾一の話。小学校では活発な餓鬼大将で、読んでいて級友の蓮田君と重なった。吾一を励ます担任の先生は良い人だと思ったのに、最後に大逆転し、吾一に渡すようにと富豪から預かった大金を全部使ってしまう。信頼していた先生の裏切りに、吾一より私の方がショックを受けた。淡々としている吾一がじれったかった。
『少年のための次郎物語』は、下村湖人の『次郎物語』の子供版。かわいがってくれた乳母から離され、しつけの厳しい母に反発する少男の話は、息つく暇もないほど面白かった。吉村先生が小学校の卒業祝いに大人版の『次郎物語』全5巻をくれたが、第2巻以降は退屈した。次郎の年齢が私より上で心理が理解できなかったこともあると思うけれど、吉村先生も第2巻以降は冗長だと言っていた。
先生は5年生の冬休み前にも本をクリスマスプレゼントしてくれた。タオちゃんとシマちゃんと私の3人に1冊ずつくれたので、3人で回し読みして、読後感想文を冬休みの宿題にした。特定の児童にだけ物を贈るという先生の行為に私は少し疑問を持ったが、ほかの子に内緒にするようにとも先生は言わない。お気に入りの蓮田君らにはもっといろいろ渡していたのかもしれない。6年生の2学期にシマちゃんと2人で先生の家に遊びに行ったことでも。翌年の年賀状に、「また遊びに来てくださいね」と書いてあるのをシマちゃんに見せた数日後、シマちゃんの家に行って彼女に来た年賀状を見せてもらうと、吉村先生からの葉書に、「また遊びに来てくださいね」と彼女が鉛筆書きしていて驚いた。自分には書いてもらえなくて悲しかったのだろう。先生は配慮がちょっと足りないように私は感じた。小学生にとって担任の先生は親の次に大きな存在なのだから。まさかシマちゃんと私が年賀状を見せ合うと思わなかったのだろうが。