関西弁4
東京弁の『しょっぱい』は共通語の『塩辛い』に当たる。でも関西では『塩辛い』を単に『辛い』と言うことが多く、唐辛子やワサビのスパイシーな辛さと塩の辛さの違いに鈍感だ。『辛い』と『熱い』の両方をhotと言う英語圏の人が両者の違いに鈍感なのと同じで、言葉は思考に大きな影響を及ぼすようだ。『辛い』と『熱い』は同じ感覚とみなす学説が正しいとされているが、私はうなずけない。『かゆい』は『痛い』の軽いものという学説が長い間信じられてきたのが、最近否定された例もあるもの。『酸っぱい』は関西ではスイと言う。関西人は塩味にも酸味にもパイを付けない。
動詞の活用も関西弁には共通語と異なるものがある。『足りる』・『借りる』は上一段ではなく、古語と同じ五段活用だ。『足りない』を『足らへん』と言う。終止形は『足る』・『借る』。ラ行五段活用は連用形にタやテが付くとき促音便になるから、『借りた』より『借った』と言う場合が多い。『借った』は共通語の『買った』と同じ発音なので、東京人がよく誤解する。関西弁のワ行五段活用の音便は促音便でなくウ音便で、『買[こ]うた』となり、関西人どうしは『借った』と『買うた』を聞き間違えることはない。関西弁の『借った』と共通語の『買った』はアクセントが違うが、東京の人は気付かない。『借った』は共通語の『勝った』と同じアクセントで、カを高く発音する。共通語の『買った』はタが高く、関西弁の『勝った』と同じ。