公害
真理子は、歌舞伎役者の18代目中村勘三郎や10代目坂東三津五郎と同じ学年である。私は歌舞伎に疎いが、幼児期から『勘九郎ちゃん』として有名だった勘三郎と、NHKの連続テレビ小説の『おていちゃん』に出演した坂東三津五郎の2人は知っている。勘三郎は57歳で、三津五郎は59歳で亡くなった。1年下の翔子も含めて皆薄命だ。ほかに、幼児期から病弱の人生を送っている人も私の身近にいる。原因が不明と親は言う。勘三郎を除く4人は全員長子である。勘三郎も姉と年が離れているようだ。四大公害病が深刻視される直前に生まれた彼らは、公害の犠牲者ではないだろうか? この年代の長子の死亡率は、森永ヒ素ミルクの被害者を別にして、統計上有意に高いということはないのだろうか?
私が息男を産んだのは1972年(昭和47年)である。5年前の67年に公害基本法が施行され、以来公害問題が日本人の一大関心事となっていた。つわりで苦しんでいるときに、「これから生まれる赤ちゃんは母体に蓄積した毒物を吸収して生まれてくる。それで母体がデトックスされて、次に生まれる赤ちゃんからまともな子になる」とまことしやかに話す人がテレビに出ていて、私はその話を聞いてますますつわりがひどくなった。でも周囲を見回して、私の息男と同じ世代の第二次ベビーブーマー達は皆元気に育ったように感じる。公害の毒物を最も多く体内に抱えていたのは、真理子達の親だったのではないか? その後少しずつ国土が浄化されて、母体の汚染度も徐々に下がってきたのかも。ダイオキシンやPFASやマイクロプラスチックなどの新しい公害物質も、次々と生まれているが。この話を真理子の弟の正にしたら鼻で笑われた。
総務省のHPより